夢恋・second~その瞳に囚われて~
「君がなにを考えているかは知らないが、彼女をどうにかしたいと思っているならやめてくれ!迷惑だ!!」
拓哉はなにかを言おうとしたが、そのまま俯いた。
両手を握りしめ、黙っている。
「さあ、芹香ちゃん。行こう」
私は佐伯さんに肩を抱かれ、押し出されるがままにおずおずと歩き出した。
「六時半に……北ターミナルから出るから」
しばらく歩くと、背後から拓哉の声がした。
佐伯さんは一瞬止まって拓哉を振り返ったが、なにも言わないで再び歩き出した。
拓哉が言う北ターミナルとは、反対方向へと向かう。
これで良かったのかも知れない。今、二人になってしまったら、あっけなく拓哉に全てをさらわれてしまうだろう。そんな予感はしていた。
「芹香ちゃん、ここは星野くんに任せておこう。君の熱意は彼にも伝わってるよ」
隣を歩く佐伯さんを見上げる。いつもの冷静な表情に戻っていた。
佐伯さんは、なにも聞かないつもりなのかな。
名前で呼び合ったことについては。
「あの、佐伯さん。私は実は……」
今度こそ、自分から告げてしまおう。なにもかもを。
このままいたなら、自分の心が壊れてしまいそうな気がする。いつか、拓哉への想いが気持ちの奥底から、強い力で吹き上げてくるような予感。
自分の意思を無視して、それは日増しに強くなっていた。