夢恋・second~その瞳に囚われて~
廊下の曲がり角の向こうから、ひとりの女性が現れ、佐伯さんに声をかける。
彼女のことは知っている。物流課の梨元係長だ。
「ああ。お疲れ。今は急ぐからまた」
彼女を避けるかのように、素っ気ない返事をすると、佐伯さんは急に早足になった。
「ちょっと。待ってよ。次はいつ会えるの?それだけ教えて」
梨元係長は、小走りで佐伯さんに追いつき、腕を素早く掴むと、彼の前に立ちはだかり行く手を阻んだ。
「……またいずれ。今はほんと、悪いけど急いでいるんだ」
「なによ。冷たいのね」
言いながら彼女が私を見る。
「あら。もしかしてあなたが……秋田さん?ああ。あなたなのね。孝之も悪ふざけが過ぎるわ。こんなに若い子を」
「春香!やめろ」
焦ったように彼女に言う佐伯さんの顔は、先ほど拓哉に向けた表情と同じだった。再び、冷静さを欠いたような彼を、私は唖然としながら見ていた。
「あなたがやめなさいよ。どうして私だけじゃ満足しないの?ほんと、病気ね」
え……。
耳を疑った。