クールな同期が私だけに見せる顔
最低男

部屋の中にさし込んでくる、
柔らかな朝の日差し。

サラッとした心地よい、
綿のシーツの肌触り。

男らしい固い胸が
ぴったり背中に寄り添っている。

程よく筋肉のついた体から伸びてきた腕が、ゆるく体に巻き付いている。

何日か前に見た、映画のワンシーンみたい。

こんなふうに朝、目覚めたらいいなと思ってたっけ。

部屋のテレビに向かって、そうつぶやいたのを覚えている。

もて余すように指先に髪を巻き付け、
頭を撫でてくれるのが心地よい。

そうそう。こんなのがいい。
規則正しく上下する胸は、
ゆっくりと力強いリズムを刻んでる。

首筋に、時々ふうっと息を吐きだされ、
彼に「起きてた?」とささやかれる。
そのたび体が、ピクンと反応させられるのだ。

どれぐらい、久しぶりだっけ?
こんな風に、誰かの腕の中で、包み込まれるように目覚めたのは。


逞しい腕の中に安心して、
すっぽり収まって、あくびをした。
ん?
にしては、妙にリアルだ。

背中にぴったりとくっ付いてる、
大きな体が、私が動くたびに、
つられて一緒に動いてる。

それに、頭の中に残ったイメージにしては、
やけに生々しい。

後ろから、男らしい息遣いまで聞こえる。

でも、いいか。
肌に触れたところが、しっかり馴染んで、もう一つの皮膚のよう。

何だか、とっても心地いい。
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