クールな同期が私だけに見せる顔
「晴夏は、今日俺のことどのくらい考えた?」

「たくさん考えたよ」少し、上の空だった。

「たくさんって、どのくらい?俺の方が長かったら、悔しい」

「じゃあ、きっと、私の方が多いと思う」適当に答えてしまった。

「やっぽり違うだろう。絶対に晴夏の方が少ない」

「なに、それ。少ないからって、何がいけないのよ」

「俺の方ばっかり晴夏のこと考えてる」

「私はその方が嬉しいけど」

「俺は、あまり嬉しくない」まるで子供の用に言う。

「じゃあ、考えないようにすれば」

「そうしたいけど。自然に浮かんでくるから、止めるのは無理だ」

「省吾、たくさん考えたって、仕方ないものよ。壊れるものは壊れるのよ。自分ではどうにも出来ないことがあるのよ。自然に任せれば、それでいいじゃないの」

「よくない。晴夏は……
俺のこともっと、もっと好きじゃなきゃいけない。だろ?」

「だろって……」

「だから、もっと好きにさせる。
俺なしじゃ、いられなくなるくらい、メロメロにしてやる。
だから、晴夏、洗いもんなんか、後でいい」

「後にしろって……」

洗剤で片づけ物をしていた。
泡だらけの手でお皿の汚れを落としていた。

腰に置かれていた省吾の手が、すっと胸の上に置かれる。

「省吾、すぐに終わるから。もう少し待って」

「ん、このまま待ってる」
彼は、胸を手のひらで撫でまわしながら言う。
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