クールな同期が私だけに見せる顔
本当の想い
美登里さんが出て行って、しばらくすると島村課長がやって来た。
私は、作業していた手を止めて、ファイルにまとめておいた資料を机の引き出しから取り出した。
「やあ、鈴木君?一人なの?」
課長は、美登里さんが近くにいないか、周囲に目を配りながら言う。
「はい。美登里さんは銀行です」
私は、ファイルの中身を確認してから課長に渡した。
「あっ、そう。ありがとう。
だったら、ちょうどよかった。話があるから、ちょっと来てくれないかな」
私は、近くにいる女の子に電話の番を頼むと、課長についていった。
営業とは、壁で仕切られていて、普段は営業の人たちとは顔を合わせない。
フロアには、省吾だけでなく他の営業マンも出払って、誰もいない。
事務をする女の子が、パソコンのキーを叩く音だけが聞こえてくる。
課長は、営業部で使っている会議室のドアを開けて、中に入って待ってるようにと言った。