クールな同期が私だけに見せる顔
「課長、それから……
この調査は、これで終わりということでいいでしょうか?」

正直言って、もうやりたくない。

「ああ、そうか。そうだよな。
まあ、それでもいいだろう。
あまり気分のいいもんではないもんな。
実は、もう一週間だけ、君にやってもらおうかと思ったけど」

「すみません、来週は早めに夏休みをいただいていますので」

偶然だけど、早めに夏休みを取っていた。

いい口実になってよかった。

それに、上手くいけば省吾と会わずに済む。

「そうか。それは悪かった。それなら、仕方ないな。
構わんよ。気にせずに休みを取ってくれ。出してもらったものだけで十分だ」

「課長、ではこれで」

私は、すぐに立ち上がった。
一刻も早く会議室から出て、営業のフロアから立ち去りたかった。

会いたくないと思うと、声がしたり、姿が見えてくるものだ。


「暑っついなあ、今日は」という声が飛び込んで来た。

省吾だ。
彼の声だ。間違いない。
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