クールな同期が私だけに見せる顔

どうしよう。

課長の後ろについて、陰になってもらえば、気付かれずにここから出られるかもしれない。

そんなふうに考えて、挨拶すると下を向いたまま、その場を立ち去ろうとした。

幸い、省吾は、入り口付近の誰かにつかまって、話しかけられて足止めを食らっている。


「ああ、そういえば、鈴木君。最近はどうかね?」

私の前で、立てになってくれていた課長がくるっと振り返り、汗だくの顔で尋ねた。

島村課長は、体格もいいけど、やたら声がでかい。

フロア全体に聞こえるように言う。

「最近ですか?」

私は、なるべく小さく答える。

「ん、中谷だよ。俺も電話してないけどな」

「はあ」

頼むから、それ以上何も言わないで。
手を合わせながら願った。


省吾が、こっちに向かってくるのがちらっと見えた。
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