クールな同期が私だけに見せる顔

しばらくにらみ合っていた。
その時、ちょうどボクシングの仲裁が入ったように、携帯の着信音がした。

「すみません」

私は、急いで美登里さんに断って、私はその場を離れた。


部屋を出て、廊下まで来たところで、歩きながら携帯の画面を見た。


中谷俊介と表示されてる。


俊介さん?どうしたんだろう。

すぐに、電話に出る。

聞きなれた声がした。


――晴夏か?俺。どう元気だった?今、こっちに来てるんだけど。


――ん、元気だよ。俊介さんなの?

――そうだよ。久しぶりだね


落ち着きのある、耳に慣れた心地よい声。懐かしい。

――俊介さんなの?ほんとうに?信じられない。今どこにいるの?

――そっちのフロアに向かってるところ。これから、少し出られないか?

――うん。待ってる。



12時まであと十数分。

私と俊介さんは、少し早い昼休みを取った。

「お腹減ってる?」

俊介さんが、優しく笑って私の顔をのぞき込む。

もう、付き合ってる恋人じゃないのに、恋人同士のような距離感は変わらない。
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