クールな同期が私だけに見せる顔


会社から少し離れた、駅ビルの中のレストランに入る。

レストランというより、カフェのようだった。

うちの会社の社員は、ここまでやってこない。

だから、落ち着いて話せる。


「元気そうだね」

「ん……」

取りあえず微笑んで見せる。

元気そうに見える?


ああ、もう。これって相当ひどいってことだ。

彼は、大丈夫な時は、『大丈夫そうだね』とは言わない。

やつれてるけど、困ったことがあったら遠慮しないでねって言う意味だ。


酷い顔、本当に大変な思いをしている人に、彼は、現実を突きつけるような真似はしないのだ。


だから、とっても元気じゃなく見えてるってこと。

疲れてるんじゃなくて、元気がない。

俊介さんには、そう見えるのだ。


「疲れてるのかも」

「ん、元気出せよ」

私は、黙って彼の顔を見つめる。

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