クールな同期が私だけに見せる顔


俊介さんに指摘されて、自分がどれだけひどい状態か分かった。

数か月ぶりに会う彼は、きちっとして背筋を伸ばしてる。

短めの髪をきちっと整えて、出来る営業マンという容貌だ。

さりげなく相手に恥をかかせないように気を使ってくれる。

大人なのだ。


それなのに、俊介さんに心配されても私は何とかしようって気が起こらない。
自分の姿を何とかしようという気力がわき上がってこない。

自分のことだけじゃなくて、他の人に関わることも、すべてのことに無理力だった。


会社から帰って来て、ようやく自分の部屋にたどりつく。

くたくたに疲れてて、ベッドにもぐりこむだけっていう生活。

私が、いっぱいいっぱいだって俊介さん、すぐに気が付いたのだろう。


「いや、あの。君は、変わってないよって言いたかったんだ」
彼が慌てて付け加える。

私は、顔を上げて俊介さんを見る。

感じよく微笑む口元から、大人な落ち着きのある声が聞こえる。

きびきびとした話し方のせいか、きりっとして見える。

ハイブランドの オシャレな眼鏡ごしに、穏やかに私に視線を送っている。

俊介さんは、変わってない。


ひどいことになっているのは、私だけだ。

省吾も、俊介さんも普段と変わりない。

あの、美登里さんだって平常心でちゃんと仕事をしている。

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