クールな同期が私だけに見せる顔


付き合いだって、静かに始まった。

ゆっくりと始まって、じわっと彼の良さが伝わった。
一緒にいると、落ち着いた時間が過ごせた。


省吾が相手だと、こんなふうにいかない。

突然、彼との関係が、終わってしまうのではないか?
彼は、私に飽きてしまうのではないか。

そんなことを不安に思いながら、彼と時間を過ごす。


今考えれば、落ち着かないって、
そう意味だったのかなと思う。

省吾は、誰のものにもならないんだもの。

だから、不安なんだ。



「ごめん、待たせたね」
彼が、ロビーに入って来るのが見える。

顔の前に手をやって、遅くなってごめんと、ジェスチャーで示してくれる。

俊介さんなら、どこかに消えてしまったり、突然別の誰かが現れることもない。

私といて、つまらないんじゃないかと怯えることはない。

なんでも、省吾中心で、省吾のペースで進むこともない。

俊介さんなら、立ち止まって、ちゃんと私の話を聞いてくれるもの。


「大丈夫だった?」

「うん」ほら、こんなふうに。

私は、彼に対して微笑んで見せる。

もちろんよ。
この人に、なんの不安もないもの。

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