クールな同期が私だけに見せる顔


「誰から聞いたの?」

「課長から。仕事のことで連絡を取った時に教えてもらったよ」

「島村課長?」

「ああ、そうだ」

「何で、課長が知ってるのよ」

彼は、優しく笑った。

「知ってるって。そりゃあそうだろう。
仕事中に大きな声で、辞めますって、宣言しちゃったんだって?
課長以外にも、他のやつからも、
このこと聞いたぞ。
晴夏と、いよいよ結婚するのかって聞いて来たやつもいたし」


「会社を辞めるって宣言すると、
結婚になるの?」

「俺たちが付き合ってたの、みんな
知ってたからね。
それに、ちょうど離れ離れになって、
寂しくなる時期だ。
一人になって、晴夏も少しは先のこと
考えただろう?」

「考えてるけど。結婚が優先じゃないよ。仕事辞めちゃったら、次の仕事
探さなきゃいけないもの」

「探すなら、いっそのこと
仙台はどうだ?

いや、そんなに、驚くなって。
ちょっと気分を変えるのもいいだろう?」

「俊介さん、どうしちゃったの?」

「誰も知らない土地に一人でいるのって、思いのほかこたえるもんだな」

「俊介さん?」

「誰もいない場所に一人っていうより、
晴夏のいない場所で暮らすってことかな。

君のいない部屋に帰ってくるのが、
張り合いがなくて」
< 174 / 220 >

この作品をシェア

pagetop