クールな同期が私だけに見せる顔


「さあ、晴夏、着いたよ。
ここで降りないと」

私は、ドアの間に立っていた。

本当にこれでいいのか、判断が付かない。

俊介さんに優しく引き寄せられ、私の体は、
エレベーターから引きはがされた。

「しょうのない人だな」

エレベーターを降りて、廊下の壁に押し付けられたと思ったら、彼の顔が近づいてきた。

強く唇を押し付けられ、息ができなくなった。

何度もしてもらった、優しいキス。

「晴夏……省吾のことは、何も聞かない。
今日から俺の方を向いてくれれば」

「俊介さん……」

「黙って。何も言うな。
省吾のことなんか忘れろって」

そうしたいのは、私だって一緒だった。

省吾しか受け入れられないなんて、
生涯独身確定だもの。

十分息を吸う前に、俊介さんに、
もう一度キスをされた。


彼に抱きかかえられて、いつの間にか
彼の部屋の前まで来ていた。

たとえ何もなくても、部屋の中に入ってしまえば、省吾怒るだろうな。

怒って、許さないっていうかな。

怒るなら、怒ればいい。

そうすれば、省吾だって私の気持ちも分かるだろう。



今さら、考えても仕方ないけど。
< 177 / 220 >

この作品をシェア

pagetop