クールな同期が私だけに見せる顔
「さあ、晴夏、着いたよ。
ここで降りないと」
私は、ドアの間に立っていた。
本当にこれでいいのか、判断が付かない。
俊介さんに優しく引き寄せられ、私の体は、
エレベーターから引きはがされた。
「しょうのない人だな」
エレベーターを降りて、廊下の壁に押し付けられたと思ったら、彼の顔が近づいてきた。
強く唇を押し付けられ、息ができなくなった。
何度もしてもらった、優しいキス。
「晴夏……省吾のことは、何も聞かない。
今日から俺の方を向いてくれれば」
「俊介さん……」
「黙って。何も言うな。
省吾のことなんか忘れろって」
そうしたいのは、私だって一緒だった。
省吾しか受け入れられないなんて、
生涯独身確定だもの。
十分息を吸う前に、俊介さんに、
もう一度キスをされた。
彼に抱きかかえられて、いつの間にか
彼の部屋の前まで来ていた。
たとえ何もなくても、部屋の中に入ってしまえば、省吾怒るだろうな。
怒って、許さないっていうかな。
怒るなら、怒ればいい。
そうすれば、省吾だって私の気持ちも分かるだろう。
今さら、考えても仕方ないけど。