クールな同期が私だけに見せる顔
んん……
やっぱり変だ。絶対に誰かいる。
スクリーンの中の俳優さんじゃなくて。
現実に。
昨日は何してたんだっけ。
そう、昨日は同期の女の子たちと、
普通に飲んでた。
金曜だし、どこか行こうよって盛り上がって。
それより、あれ?
えっと。どうして私、
一人で眠ってないんだっけ?
何で、ここに人がいるわけ?
俊介?
まさか。転勤先から戻ったの?
私は、背中にぴったりくっついてる男の顔を見ようとして体を動かす。
何度か試みるけど、引き戻そうと伸びて来る逞しい腕に引き戻される。
彼のわけ、ない……か
彼とは、ほとんどケンカみたいに別れちゃったし。
それに、彼は眠った後にこんなふうに抱きしめたりしない。
そうだ。
彼は、数百キロも離れた遠くにいるはず。
用もなのに、私に会いに来るわけがない。
じゃあ、俊介じゃないとしたら、誰?
一緒にいたの、誰だっけ?
そういえば、会社の営業の
男の子たちと出くわして、
合流することになったんだっけ?
男たちのノリで盛り上がって、
賑やかになって、
それで飲み過ぎたんだ。
じゃあ、これって現実?
ほんとなの?
体の前に、にょきっと伸びた腕。
この腕から何度も逃げようとしてるのに、その度に捕まえられる。
張りのある逞しい腕。固そう。試しに少しつまんでみる。
腕に抱きついてみると、とってもいい感じ。
背中に当たってるお腹も、
ぷよんとしてない。引き締まってる感じ。
やっぱり、この人俊介じゃない。
彼は、体を鍛えるより、本でも読んで
知識を蓄えたいっていうタイプだもの。
じわっと、昨日のなまめかしい、
熱い記憶がよみがえる。
背中の彼の様子を思い出して、胸が熱くなる。
やっぱりおかしいって。
俊介さんが、あんなことするわけがない。
普段、とっても淡白な彼が、
積極的にしてくれたことって……
あんなこと……
ありえない。
それに彼って、こんなお腹していない。
離れてたうちに、体型変わった?
彼の名誉のために言っておくと、
俊介は標準体型だ。
後ろで寝ている男の方が、
ジムかどこかで鍛えてるのだろう。
例え鍛えたとしても、
3カ月じゃ無理だろうな。
それに、俊介は、
あっさりしたもので、寝るとき相手を
抱えるなんてことはしない。
私は、うす目を開けて、
少し顔を上げてみる。
大きな体に阻まれて、
相変わらず男の顔は見えないけど。
もしゃっとしてる髪の毛が
チラッと見えた。