クールな同期が私だけに見せる顔
「晴夏の分、立て替えてくれてありがとう」
咲良がわざわざ追いかけて来て、お礼を言ってきた。

「どういたしまして」

「省吾、晴夏は、私んとこ連れてくから。タクシーに乗せるの手伝って」咲良が早くしろと催促する。

「いや。今日はダメだ。俺が送ってく」
意思表示するみたいに、晴夏の体をぎゅっと抱きしめる。
確かに咲良なら預けられる。でも、晴夏のこと他人に任せたくない。

いつも途中で晴夏をさらって行く、中谷さんがいなくなったのに。
晴夏送っていくのは俺が引き受ける。

「ダメ。省吾、信用できない」

「信用できないって、何だよ。大丈夫だって。ちゃんと家まで送り届けるから」

「どうしてもって言うなら、いいけど。きちんとしてよね。いい加減なことしたら許さないから」

「ああ、わかってるって」

「さあ、晴夏。帰るぞ」

タクシーに乗せて晴夏の家まで送った。

「降りれるか?」と聞いたものの、すでに寝てしまって、俺の呼びかけにもほとんど応じない。タクシーにお金を払って部屋まで晴夏を連れてあがっていった。

ジャケットだけ脱がせて、ソファのひじ掛けにかけておく。
晴夏は、ベッドに転がしておこう。タクシー帰しちゃったし。今日は、ソファで寝よう。

後は一人で何とかするだろう。

「喉乾いてる?水、持ってこようか?」

「ん、ありがとう」晴夏は、ソファのひじ掛けに寄りかかって、少しだけ水を飲んだ。

「晴夏、いつもみたいのがいいな」

「いつもみたいって、どうするの?」

晴夏は、信じられないことに俺の首に腕を巻き付けて来た。

「お、お前何すんの?」目の前に晴夏の顔が見える。





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