クールな同期が私だけに見せる顔
明るい色の髪の毛……
くるんとしてる。
無造作にパーマかけてるみたい。
こんな、ふわっとした
明るい髪なんかじゃない。
俊介は、真っ黒の短い髪だった。
じゃあ、この人は誰?
私、誰だか知らない男とベッドにいるの?
嘘だ、そんなはずない。
もう、起きなきゃ
んん……無理。頭が重い。
頭だけそのままにして、手足をごそごそ動かす。
「起きた?」
重かったのは、男のせいだった。
彼の体か半分ほど私の上に、
のしかかっていた。
大きな岩のような体が動いて、
急に体が軽くなって楽になった。
男は、長い指で、私の頭をひっくり返そうと突っついている。
「何すんの」
恥ずかしさで、まともに相手の顔を見られない。
「ひでえ言い方。
でも、あの時の声って、
凄くいいんだな、お前。
すごい、そそられたよ。
もう一度、試してみるか?
今度は、耳元でその声聞かせてよ」
なに言ってんだ?こいつは……
もちろん、こんなの完全に無視だ。
誰だか分からない男は、私のお気に入りの枕を占領している。
まず、そこからして気に入らない。
髪を撫でていた指が、私の頭を突っついた。
と思ったら、今度は私の首筋をかすめて、腕を撫でる。
ぎゅっとつかんだり、行ったり来たりしてる。
男の大きなごつっとした手が、
二の腕を通り越して
私の肩をぎゅっとつかんだ。
「返事しろよ、晴夏。こっち向けって」
私は、無理やり体の向きを
変えさせられた。
体がゴロンと転がって、
朝日をまともに浴びる。
まぶしい。溶ける。
清々しい朝の光で目がくらむ。
清々しいはずの朝に似合わない、
二日酔いで死んでいる重い鉛のような頭。
男の顔は、朝日の逆光になってよく見えない。
顔の輪郭が影になって、ぼんやり目に映る。
ん?
どこかで見た顔。
目の錯覚か?
うそ……だよね?
マジ?
ねえ、お願い。
誰か嘘だと言って。
「けっ、沢井省吾……」のはずない。
お願い。誰かそう言って。
「けっ……て何だよ。ひでぇなぁ」
省吾が笑った。軽やかに。
まるで、こんなことたいしたことじゃないだろ?
何でもない、よくあることさって
いうように。