クールな同期が私だけに見せる顔



ピンポン!



玄関のベル?

宅急便にしては遅いか。
こんな時間に何だろう。

「うわっ!」

水道の蛇口を一杯にひねっていた。
考え事していた私は、手元を狂わせてさらに水を被ってしまった。


「冷たい……」

いきなり、顔にまで水を浴びた。

バカみたい。本当にどうかしてる。

私は、タオルで顔を拭きながら、時間も考えずドアを開けてしまった。

簡単にドアを開けるなんて、確かにうっかりしていた。


ドアの向こうに立っていたのは、不機嫌そうに私を見ている省吾だった。

さっき出ていったばっかりなのに、
「警戒しろって。お前何やってるの、物騒だな」と言う。

キョトンと彼を見つめる私。

「あのなあ、お前、のぞき穴も見ないでいきなりドアなんか開けるなよ」

確かに無用心だし、私の落ち度だけと、開けてもらって文句を言うことないじゃないの。

「開けるなよ、じゃなくて。
何で帰ってくるのよ。忘れ物?」

「ん、まあな」

彼は、私を押し退け、ずかずかと部屋に入り込んで来た。

「何忘れたのよ。一緒に探すから、早く言って」

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