クールな同期が私だけに見せる顔


昨日は、かなりお酒を飲んでいた。
朝になっても体が重い。
それ以上に、身体を動かす気力がない。

ベッドからどうにも動きたくない。

「お願い。ダメ。もうしばらく放っておいて」
「ん、わかった」
男性にしては少し高い声。
それがとても心地よい。なんだよね。

意識した事なかったけど、
『ベッドで聞くには、最高の声』なのだ。
本当に省吾の声だ。

すぐそばにある、鼻筋の通ったきれいな顔。

シャープな顎の輪郭。
ずっしりと感じる体の重み、
彼の体に触れる感じも。
横で寝ているのは、省吾に違いなかった。

端正な顔って、正面向いても格好いい。こんなに間近で見る機会があるなんて。
そんなことで、感心してる場合じゃないって。

土曜日の朝、私は、誰かの腕に抱きかかえられるようにして、まどろんでいた。

目覚め方としては、
まあまあいい感じだけど。

本当にこんなのって、久しぶりだし。

いやいや。ダメだって。

例え、社内一のいい男、沢井省吾に
腕枕されて目覚めるなんて、
社内の女の子が叫びそうな
シュチュエーションたとしても。

久しぶりだからって、流されるな。

頭を働かせて。

私は、この状態が気に入ってるんじゃない。
心地いんじゃないの。

そこはブレるな。

何もしたくない、何も考えたくない。頭が重い。
でも、考える時間が欲しい。

昨日の夜から、今までの時間、
きれいさっぱり消去して、何もなかったところから始めたい。
このまま、もう一度夢の中に
今見た光景、なかった事にならないかな。

省吾も酔ってて、
昨日のこと覚えてないとか。

何も覚えてないって言えば、
彼も私に合わせて、なかったことにしてくれるかな。

でも、彼の腕枕、気持ちよかったな。
じゃなくて。
省吾の腕枕、想像するの禁止。

少しくらいなら触っていいかな。
いや、ダメだって。

「なに呟いてるの、こっち向けって」

彼の要求を無視していたら、
彼がしびれを切らした。
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