クールな同期が私だけに見せる顔
キッチンの水の音が止んだ。

「晴夏?」彼の声がする。


こっちに向かって近づいてくる足音。

まずい。鍵、かけてない。

私はとっさに動いて、ドアに手をかける。

鍵を閉めようとしたら、巻き付けたバスタオルがはらりと落ちた。

それに気を取られて鍵をかける前に、省吾に無慈悲にあけられた。

「おい、晴夏。こっち終わったぞ?
濡れた服は……おおおお」

バスタオルに気を取られていた分、ドアの隙間に足を入れられた。

「見ないで」


「見ないでって、言われても……
絶対、見るだろう。こんなおいしい場面」

「あっちに行ってて」


「嫌だな。この間は、暗かったし。水蒸気で曇ってたし。
しっかり見えなかったから」

ドアを開けられ、ようやく手元に残ったバスタオルで前を隠す。

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