クールな同期が私だけに見せる顔


彼は、突っ立ったままだ。

自分から遠慮して、立ち去ろうとする気持ちはないみたいだ。

「お願い。向こうに行ってて」

指で示して、無理してでも威厳を保つ。

「それも嫌だな。せっかく晴夏ちゃんが
勇気だして俺にバスタオルでアピールしてくれたのに」

ニヤニヤ笑ってる。

私、アピールなんてしてない。

確かに、笑いたくなるような間抜けな格好だけど。

「じゃあ、私が出てく」

どうやって、省吾の横をすり抜けようかと考えてたら、腕をつかまれた。

「風邪ひくだろう。このまま、お風呂入ろう」

逃げようと思ったけと、あっさり腕をつかまった。

彼は、私をバスルームに押し込み、蛇口をひねる。


お湯が溜まる間彼は、私を興味深そうに見ていた。

この男は……

さっきまで、部屋に入れてくださいってお願いする立場だったのに。

いつの間にか立場が逆転して、私は彼の言いなりになっている。


「お、お湯ためてどうするの?」

シャワーでいいのに。

熱いお湯を流せば
一瞬で心地よくなれるのに。

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