クールな同期が私だけに見せる顔


「自分からって」

お前、なんてこと聞くんだって眉をひそめてる。

恋愛上級者には、無粋な質問だった?

私は、省吾の形のいい顎のラインを見つめる。

「そうそう。ほら、学生の時、女の子のこと好きになったりしなかった?
好きになった子に、好きですって告白したりしなかった?」

「どうだったかな」

と言ったまま、彼は面倒くさそうに、あごに手を当てて考え込んだ。

そんなに考え込むほど、色々あるの?

さぞ、恋愛経験が豊富なんだろうな。
なんだ、武勇伝なんか聞かなきゃよかった。

省吾、考え込んだままじっとしてる。

考えたまま動かなくなった。「省吾、もういいって」私は、聞き出すのを諦める。
考えた挙句に、「ん、やっぽり、ないかも」と言って結論付けた。

「ないって?一度も?」

「んん……好きになったと思ったこともあったと思ったけど。そうだっていう、はっきりした自覚した感情はなかったかな」

すごく歯切れの悪い言い方だ。


「そうですか」

「ん、正直に言うと、そういう感情って、今までよくわからなかったのかな」


「全然?」
私は、目を丸くした。

人を好きになったことないって?
冗談言ってるの?この人。

「うん、全然」

それなら、私の事が、好きなんて本当かどうかわかんないじゃん。
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