クールな同期が私だけに見せる顔

見慣れた部屋の天井が見える。
私は、自分のベッドで仰向けになっていた。

彼が大きな体を重しにして、私を押さえつけた。

「えっと……」何すんのよ。

かろうじて、私は服を着ていた。

いい感じにヨレっとした、お気に入りのTシャツ。
後は、ショーツのみ。

初めてのお泊りとしては、最低の選択。
これじゃあ、幻滅するって言われても仕方ないレベル。

セクシーだけど、生活感が出てるのは大きくマイナス。

普通の感覚なら、こんなに心もとない格好で、省吾に近づいたりしない。
昨日の私は、別人か狂ってたんだ。

「何?」

彼は、何も着ていなかった。
完璧な体を私の上に乗っけて上から見下ろしてる。

体型は、完璧。
すらっとしたギリシア彫刻のようだから、着るものなんかいらない。
むしろ、私はこの方が好き。

これまでも、彼の背中を見たことはあったけれど。

服を脱いだところを、前から見たことはなかった。

ホント、見とれるほどいい体。
少しくらい指で触れても……

誘惑に負けてはいけない。
駄目だ。突っぱねないと。
そんなことしてたら彼の思うつぼだ。

「体、重いって。おりてよ」

彼は、退いてくれるどころか、反対に私の体を押えにかかった。

「ダメ。放すと逃げるだろ?」
それはそうだ。
今すぐにでも逃げ出したい。

逃げ出して記憶も昨日の出来事が、きれいさっぱり消えてくれればいいのに。

でも、今は、体が石みたいに重い。

昨日の酒が、全然抜けてない。
彼が動くたびに、体が揺らされる。

大きな手が、何の迷いもなく
シャツの裾から侵入して来た。
いきなり片方の胸をつかんだ。

「ひぃ!」
昨日も同じようにされた感覚が肌に残ってる。

「ん?昨日の続きしよう」
省吾の甘い声、簡単に惑わされてしまいそう。

彼は、手のひらを動かして感触を確かめてる。
私に何の断りもなく。
まるで自分の物のように扱ってる。

「ちょ、ちょっと、省吾、なにしてんの!」


省吾が、顔を近づけてくる。
顔を近づける?なんで?

ふわっとした明るい髪が顔に当たる。

涼しげな切れ長の目と、
薄くて憎たらしいくらい形のいい唇。


ちょっと、待って。
「何すんの」

「何すんのって、何だよ。
色気ねえな、でも、それもありだな。
晴夏の唇、美味そう。キスしていい?」

省吾は、私の唇のほんの目の前、
ぎりぎりのところまで
唇を近づけて止めた。
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