クールな同期が私だけに見せる顔


省吾は、毎日のように家に来てる。


――今日は、9時ごろ帰る


会社を出る頃に連絡をくれて、40分経つと寄り道せずに帰ってくる。

「9時かあ、微妙だなあ」

食事をしないで待つには、ちょっと帰ってくるの遅いんだけど。


そうは言っても彼は、お腹空かせたと言って帰ってくる。

遅くなるんだったら、仕事の途中で食べればいいのに。

やってること、新婚家庭の夫のようだ。

新婚家庭?
だなんて言ってしまって、顔を赤らめる。


そろそろ、何か食べようかなって言う時間に連絡をくれる。

想像以上に、彼はマメだった。うるさいくらいに連絡して来る。

もちろん、そのことは、ありがたいんだけど。

単なる同僚の時は、毎日のように連絡をくれるなんて知らなかった。

それだけじゃなくて、少しでも時間を作って、
会いに来ようとする、まめな恋人になるとは思ってもみなかった。
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