クールな同期が私だけに見せる顔


その予告してきた時間ちょうどに、ドアベルが鳴る。

鍵を開けると、省吾がただいまと言って立っている。

「暑つーい!」

彼が汗をかいて、上着を脱ぎながらクーラーの涼しい風に当たっている。

「暑かったんだね。それにしてもすごい汗。そんなに汗かくほど、外って暑かったの?」

「いいや、俺、駅からここまで走って来たから」
汗で不快そうな顔をして言う。

「はあ?なんで、走ったりするのよ」
私は、驚いて振り返る。

「なんでって、早く帰りたいからに決まってるだろ?」
彼は、ネクタイをゆるめなから言う。

「ん?」

「ん?って何だよ。もっと喜べ。
人が急いで帰って来たのに」

「どうして急ぐの。急いだって、私が
どこかに行くわけじゃない……省吾、汗臭い」

「うるさい」

「どうして、そんなに急ぐのよ。そんなに飢えてたの?」

彼の真剣な眼差し。

「飢えてたよ。会社で甘えられない分、晴夏に甘えたくて……」
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