クールな同期が私だけに見せる顔
こじらせ迷子たち
鍵を奪われそうになって、慌ててつかんだ。
省吾は、私の手を両手で包んでそっとキスした。
「ほら、かして」と手のひらを私の方に引き寄せて、握った手を開こうとしてる。
「あげない。止めて」
私は、彼の手を振りほどいて、腕を後ろに回して鍵をぎゅっと握る。
彼が一歩、近づいてきた。
「鍵があれば、こういう時に部屋の中で待っていられるんだけど」
そう言って、さらに一歩近づいてくる。
「省吾、鍵なんか持ってどうするのよ」
「晴夏に会いに帰ってくるよ。晴夏がいなければ、部屋で待ってる。晴夏が帰ってくるまでここに居たい。それだけ晴夏に会いたいんだ」
「んん?」
私は、彼が冗談で言ってるのか、真面目なのかが分からず、私はなんて答えていいのか分からなかった。
その間に彼は、にじり寄って来た。
私の前に立って、腕で私を閉じ込めて行く手を阻む。
「晴夏……本当だって。
今日だって会いたくてここまで来たんだ。晴夏に会いたかった。キスしたい」
省吾は、鍵を持った私の手を、今度はぎゅっと握る。
私を壁に押し付けて、顔を近づけてくる。
「晴夏……」
柔らかい感覚を唇に感じる。
ぴったり押し付けられた、省吾の体が熱い。