クールな同期が私だけに見せる顔



「ん……わかんないよ。
晴夏に対して抱いてる感情が、どっちが強いかなんて」

「そう……」
どういうわけか、そんな話の流れになった。

というか、愛情と欲望のどっちが強いかなんて相手に話したりするか。普通。

「欲望なのか、愛情なのか、悩む時点でおかしいのよ。考えてるってことは、愛してない証拠じゃないの。偽善者め。
そんなの、愛情がないってこと隠すために、わかんないなんて言うのよ」

「手厳しいな。晴夏は。でも、本当に、分かんない時ってあるけどな」

どうしてそんな話になったのか。

どうして、そんな漠然とした話になんて、乗ったのか。自分でもよくわからなかった。

「そんなら、逆に聞くけど。付き合ってるのに、だんだん気持ちが冷めて来て、欲望すらなくなるって、どういう時?」

「ええっ?」
省吾は、戸惑った表情になった。

口に出してから、何てこと聞いてしまったと思った。

「ごめん、答えなくていいから。
バカな質問した」

「俺もよくわからんさ」
でも、いつか来るってことでしょ?
そういう時が来るって思ってるから、永遠の約束なんて馬鹿げてるって思うんだもの。

「いっそのこと、期間を区切ろうか?省吾
期間限定ってすれば、お互いすっきりするかも」

いつか来る別れに怯えないで、いつまでって分かってた方が気分は楽なのかも。無理やりそう考えてみる。

「すっきりって何?」

「深みにはまらないで、すむ方法」

「晴夏、別れたいのか?
昨日、俺、変なことしたか?」

「違うって。今は違う」
不安そうに見てる彼を、抱きしめた。

今は違うと思う。でも、いつかは来るんでしょう?

そして、省吾はそういう気持ちを誤魔化したくないんだ。
< 79 / 220 >

この作品をシェア

pagetop