クールな同期が私だけに見せる顔
「ん……わかんないよ。
晴夏に対して抱いてる感情が、どっちが強いかなんて」
「そう……」
どういうわけか、そんな話の流れになった。
というか、愛情と欲望のどっちが強いかなんて相手に話したりするか。普通。
「欲望なのか、愛情なのか、悩む時点でおかしいのよ。考えてるってことは、愛してない証拠じゃないの。偽善者め。
そんなの、愛情がないってこと隠すために、わかんないなんて言うのよ」
「手厳しいな。晴夏は。でも、本当に、分かんない時ってあるけどな」
どうしてそんな話になったのか。
どうして、そんな漠然とした話になんて、乗ったのか。自分でもよくわからなかった。
「そんなら、逆に聞くけど。付き合ってるのに、だんだん気持ちが冷めて来て、欲望すらなくなるって、どういう時?」
「ええっ?」
省吾は、戸惑った表情になった。
口に出してから、何てこと聞いてしまったと思った。
「ごめん、答えなくていいから。
バカな質問した」
「俺もよくわからんさ」
でも、いつか来るってことでしょ?
そういう時が来るって思ってるから、永遠の約束なんて馬鹿げてるって思うんだもの。
「いっそのこと、期間を区切ろうか?省吾
期間限定ってすれば、お互いすっきりするかも」
いつか来る別れに怯えないで、いつまでって分かってた方が気分は楽なのかも。無理やりそう考えてみる。
「すっきりって何?」
「深みにはまらないで、すむ方法」
「晴夏、別れたいのか?
昨日、俺、変なことしたか?」
「違うって。今は違う」
不安そうに見てる彼を、抱きしめた。
今は違うと思う。でも、いつかは来るんでしょう?
そして、省吾はそういう気持ちを誤魔化したくないんだ。