クールな同期が私だけに見せる顔
「別れたいだなんて思ってない。俺は、このままずっと晴夏といたい」

「ん、わかった」

とりあえずはって事ね。永遠じゃない。

「晴夏こそ、俺のことイメージと違うって思っただろ?」

それに対する答えはYESだけど。面と向かってはいとは言えない。

「イメージってなに?」

「ほら、昨日、俺、晴夏の帰りを待ってたから。最初のイメージと違うって思っただろう?」

私は、そんなことないって笑い飛ばした。

「省吾の長年かかって出来あがったイメージが、たったそれだけのことで、変わったりするもんですか」

「お前、昨日の俺みたいに、あんなにしめっぽい男でも、引いたりしないのか?」

私は、笑いをかみ殺した。

なあんだ。昨日のこと気にしてるんだ。

「多少、変だとは思うけど、そうしたいなら仕方がないでしょう?」

「本当なの?お前あれ見て、気持ち悪いとか思わないの?」ちょっと不安げに彼が言う。

「どうして気持ち悪いって思うの?もしかして、以前、そんなこと言われたの?」

「言われたって言うか、
だからイメージと違うって言われるのは、そういうことだろう?」

「その元カノは、きっと省吾のこと期待しすぎたんだね。
見た目と違って、甘えん坊でわがままで、子供だってこと、知らないで付き合うからイメージと違うって思うのよ」

彼は、考え込んでしばらくしてから頷いた。

「うん。やっぱり、晴夏は違うな。俺のことわかってる」

「わかってないよ、私。こんな甘えん坊、ご免だし」

「ほら、みろ。俺のこと、ちゃんと、誰よりわかってるって」

本当だね。

ずっと、このままでいられればいいのに。

私が心配してるのは、省吾が甘えん坊なことじゃなくて。

いくら好きなものでも、食べ過ぎたら飽きてしまって見向きもしなくなるってことよ。
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