クールな同期が私だけに見せる顔
週明けのオフィスは、いつもよりまして気だるく感じた。


「悪いんだけど鈴木さん、いい加減に、電話取ってくれないかな?」
美登里さんの苛立った声がした。

「ええっ?」彼女の声で我に返った。

電話が鳴ってる。気がつかなかった。

「さっきから、ずっと私が対応してるんですけど」


美登里さんに睨まれてしまった。

「すみません」

本当だ。他のこと考えてたからだ。

私は、彼女に謝ってから電話に出た。

受話器を取って、耳に当てる。


――はい。庶務です。

内部からの電話だから、事務的に答える。



――おお、晴夏ちゃんか?

省吾のはっきりとした声が聞こえてくる。


返事をしようと声に出すと、省吾につられて声が大きくなってしまう。

私は、周りに聞こえないように、
声のトーンを落とした。


――どうかした?

普通に話してしまって、
周囲の注目を浴びる。


隣の美登里さんが、パソコンのキーを叩くのを止めた。

自然に聞こえるように丁寧に言う。

――どういったご用件でしょうか?

――なあ、晴夏ちゃん。昼飯、どうする?


――まだ、決めてませんけど。

こんな用事で、内線でかけてくるな。


―― 一緒に食べよう。晴夏に会いたい。

――はい

――後で連絡するよ。
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