クールな同期が私だけに見せる顔
ところが……
ロービーの目立つ所で省吾に声をかけられた。
「晴夏、ちょっと待ってって」
省吾が、慌て追いかけて来た。
そして、後ろから私の手をつかんだ。
その時に、省吾が私の手を引っ張って、わざと引き寄せるようにした。
視線を感じて振り向くと、彼女と目が合った。
美登里さんは、そのことをしっかり見ていて、
「やっぱり、仲がいいのね」と聞こえるように言った。
「まあね」彼は隠さずに言う。
「まあねって、あなたたち付き合ってるの?」美登里さんがちらっと見て言う。
「ん、そういうこと。だから、俺、晴夏といるから。じゃあね」
省吾は私の腕を引っ張ると、度ぎつい視線を送っている美登里さんを置いて、先に行ってしまった。
「省吾、何てことしてくれるのよ。また、面倒なことを」
「ん、ちょっと、いろいろあって、全部は話せないけど。君は、美登里から何も聞いてないよな?」
「何の話?」
「だったら、何でもない」
「何でもないって?」
省吾は、まっすぐ私を見据えてから言う。
「もう一度聞くぞ?晴夏は、あの女と関わりないよな?」
「関わりってなによ」
「俺に言えないことしてないよな?」
「ええ、今のところ」
「何かあったら、俺に言えよ」
「う、うん」