クールな同期が私だけに見せる顔
私達は、会社のビルから少し離れたところの、小さなレストランに入る。
席に着いてすぐ、省吾が切り出した。
「あのさあ、お前んとこさあ、小口清算の対応のために、銀行に行く時間頻度が高すぎるって言われたことない?」
「ええっ?」唐突に仕事の話になって驚いた。
プライベートの話だと思ってたから、仕事の話で驚いたのだ。
省吾は、庶務で銀行に出掛ける用事が多いのかと言い出した。
「そうね。他部署よりも出張が多いし、旅費の金額が高かいから。その都、度出掛けることになってるけど。私は良く分からないの。そっちの方面は全部、美登里さんの仕事だから」
「ああ、そうか……それならいいや」
「ずっと、言われるままお金を払うことになってたから、疑問に思わなかったけど。何かあったの?」
「その前に、晴夏は、それに関わってるのか?」
「いいえ。そっちの管理も美登里さんがやってるの。私には、手伝わせてもらえない」
「ん、それならいいんだ。これから、美登里に頼まれてもやるなよ」
彼は、美登里さんのことを呼び捨てにした。
「どういうこと?」
「いや。たいしたことないんだ。営業部の課長が変わっただろう?」
「ええ」島村課長の事だ。
「小口清算の対応のために、銀行に行く時間頻度が高すぎるって言い出して」
「でも、銀行に行ってるのは私じゃないわよ」
「わかってる。銀行に行ってるのは、美登里だろう?」
「直接本人に言ったら?」
「その前に、どのくらいの頻度で銀行に言ってるのか教えて欲しんだけど」
「なんで私が?」
「二人しかいないんだ。晴夏に聞くしかないだろう?」