クールな同期が私だけに見せる顔
彼女は結局予想通り、きっかり一時間後に戻って来た。

この暑いのに、涼しい顔で「ただいま」といってフロアに戻って来る。

「お帰りなさい。特に変わったことなかった?」
美登里さんは、私を上から見下ろして言う。

私はパソコンの画面を見ながら、「ええ、大丈夫ですよ」と答える。

「そう。私宛に電話とかなかった?」

「はい」

島村課長がここに来たことは、言わない方がいいだろう。

美登里さんは、席に着くとわざと暑そうなふりをして、首元に向かってデスクに置いてあるうちわを持って、仰ぐ真似をした。

私は、面倒だから見ないふりをした。



「ねえ、何食べたの?」
どうやら、放っておいてくれないらしい。


「何って、近くの店のランチです」

「そう、お昼、沢井君とずっと一緒だったんでしょう?
メニューは、ハンバーグのランチでしょ?」

「ええ、はい」
私は顔を上げて、彼女を見た。


「あら、やっぱり、それ本当だったの?」
と言って、声に出して笑っった。

美登里さんは、自信たっぷりに私を見る。


「ハンバーグランチは、あそこの定番ですからね」
私も意地になって答える。

「ええ、そうね。もちろん、そうだったわね」
彼女は嬉しそうに席に戻った。
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