クールな同期が私だけに見せる顔
美登里さんが仕事に集中してから、私は引き出しの中から、使っていない卓上用のカレンダーを取り出した。

そして、今日の日付のところに、一時間っていう意味の「1H」と小さく書き込んだ。

こんなふうにするのは、抵抗がある。

業務に関係あることだから、やりますって課長に応えたけど。

例え、サボり常習犯の美登里さん相手だとしても、彼女に悪い気がしてた。



けれども、カレンダーに書き込みを加えていくごとに、彼女に気を遣う意味はないと思うようになった。

美登里さんの行動に注意を向けてみて、本当に驚いた。

一日中、立ったり座ったりしてる。

一日の業務のうち、落ち着いて仕事をしている時間が本当に少ない。

今まで一緒にいたのに、勤務態度が酷いっていうことに気が付かなかった。

視界のすみには入っていたけど、見えてなかった。
見ない振りしてたのだ。


課長に指摘されるまで、ここまで酷いって、気が付かなかった。


省吾も言いにくいことを、わざわざ言に来てくれたのだ。


「だからか……」
私は、黙って入力を続ける。


「鈴木さん?」
私は手を止めずに、返事をする。

「はい」

美登里さんは、作業を中断して私のところまでやって来た。

「あなた、やっぱり省吾と付き合ってるのね?」

「えっと……」
正直に言っていいものか、分からなかった。

「いいわ。はっきり聞かないでおく。
省吾がいくら、そう言ったからって、ずっと関係が続くとは限らないもの」

「あの……」

「そのうち分かると思うけど。今は気にしないで。忘れていいわ」
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