フラワーガーデン【アリシア編】
「これを?ジョージが?」

その分厚い本はボロボロで、パラパラとめくるあちこちに線が引いてある。
そして、所々にある図から、それが医学書であることが分かる。

「どうしたの?これ」
「ジョージ様は、お医者になりたがっていらっしゃいました」
「え?!」

どうしてそんなこと、サリーが知っているの?

「お嬢……様?」

そんなこと、知らない。
だって、ジョージは何もそんなこと、私に教えてはくれなかったもの。
嫉妬に心が揺らめき、本を持つ手が震える。

「なんで、サリーがそんなこと知ってるの?」

私が知らない、そんな大切なことを……。

「あの……私が以前、厨房で軽い火傷をした時、ジョージ様が手当てをして下さって、その時、お聞きしたんです。『どうしてご存じなんですか?』と。
そうしたら、ジョージ様は『医者になりたくて、つい、ね』と淋しげに微笑まれて……。毎晩のようにお勉強をされていらっしゃったようでしたので、それから私は夜中には差し入れを……」

「そうだったの」

それで、毎晩のようにサリーがジョージの部屋を訪れていた訳も、私の歯が抜けた後の対応が速かったのも納得がいく。

「でも、そんなに大切な物をどうして私に?」

サリーは、スンと鼻を鳴らし涙ぐむ。
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