フラワーガーデン【アリシア編】
第9節 聞こえなかった声
屋敷の裏側にある車庫の方から、黒人霊歌が聞こえる。
ダニーの声だわ。
角を曲がると屋敷に仕えて40年という運転手のダニーがいた。
巨体を揺らしながらご機嫌な様子で黒人霊歌を歌い、車を磨いてる。
「ダニー、お願いがあるの!」
ダニーは私の顔を見るなり歌うのを止め、頭に被っていたキャスケットを目深に引き降ろす。
「すんません、お嬢様。今日は大旦那様から、大旦那様の許可なくしては車を出してはなんねぇと言われておりやして……」
おじい様は何が何でも私をジョージに会わせまいとしているんだわ。
溢れそうになる涙を押し込め、再度ダニーに懇願する。
「ダニー、お願いよ。一生のお願いなの。駅まで車を出して欲しいの」
「……すんません。お嬢様。それは出来ねぇ相談です」
ダニーは顔を背けると、モップで車の天井を磨き始める。
「ごめんなさい。悪かったわ。お前の立場も考えずにこんなこと頼んでしまって……」
諦めてダニーに背を向け歩き出したとき、「待っておくんなせぇ、お嬢様」と私を呼び止める。
ダニーの声だわ。
角を曲がると屋敷に仕えて40年という運転手のダニーがいた。
巨体を揺らしながらご機嫌な様子で黒人霊歌を歌い、車を磨いてる。
「ダニー、お願いがあるの!」
ダニーは私の顔を見るなり歌うのを止め、頭に被っていたキャスケットを目深に引き降ろす。
「すんません、お嬢様。今日は大旦那様から、大旦那様の許可なくしては車を出してはなんねぇと言われておりやして……」
おじい様は何が何でも私をジョージに会わせまいとしているんだわ。
溢れそうになる涙を押し込め、再度ダニーに懇願する。
「ダニー、お願いよ。一生のお願いなの。駅まで車を出して欲しいの」
「……すんません。お嬢様。それは出来ねぇ相談です」
ダニーは顔を背けると、モップで車の天井を磨き始める。
「ごめんなさい。悪かったわ。お前の立場も考えずにこんなこと頼んでしまって……」
諦めてダニーに背を向け歩き出したとき、「待っておくんなせぇ、お嬢様」と私を呼び止める。