フラワーガーデン【アリシア編】

第10節 幸福なフィアンセ

屋敷に戻ると、私の誕生日の準備が着々と進められていた。

気の早い招待客数人が、広々とした屋敷周辺の庭を優雅に散策している。

その中を私はペガサスに跨り、呆然と眺めながら厩まで手綱を繰る。

幾人かが私に気付いたらしく嘲笑する声が聞こえる。

「まぁ!見まして?あのカッコウ」

「ヤマザルみたいですわね。クスクス」


なんとでも言えばいいわ……。

疲れきって背を丸め、心も髪も乱れたまま、馬上で虚ろな目を漂わせる。

ポールとペガサスに礼を言うと、そのまま部屋へ戻り、ベッドにばったりと倒れこむ。

暫くすると、部屋をノックする音がした。

出たくない。

そんな気力もないわ。

ベッドの奥に潜り込んでいると、再び扉をノックする音がする。

そして、数回ノックしても返事をしないと分かると、その主はドアを開けて勝手に入って来る。

「どこか具合でも悪いのでしょうか?」

エド!?

質問には答えず、深くベッドに潜り込む。

「アリシア?」

「出たくないわ……」

エドはベッドの端に腰を下ろし、「ふー」と溜息を漏らす。
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