フラワーガーデン【アリシア編】
震える唇を押さえている私の手を退けると、耳まで真っ赤になりながら先生は自分のTシャツで私の唇を慌ててゴシゴシと拭ってくれる。

先生のシャツからは、ぽかぽかのお日様の匂いがして、私は余計クラクラしながらシートに倒れこんでしまう。

先生は、気まずそうに「ちょっと、偵察してくる」と言うと、エド達が行った後方車両へ向かった。

俯きながらでも応える私の返事に、先生はほっとしたようで、ちょっぴり微笑んでくれる。

汽車はもうしばらくしたら、以前、私が馬に乗ってジョージを追ったカーブへと差し掛かる。


編み棚に乗せたリュックを下ろし、中から腕時計を出すと抱き締める。

ジョージに会えたら、あの時伝えきれなかった想いを伝えたい。

でも、何よりも一番に「愛してる」って伝えて、抱きしめたい。


「ジョージ……。もう少しで会えるわ」

ジョージのことを思いつつも、さっきの先生のキスを突然思い出して、顔が一気に火照り慌てて掻き消す。

びっくりしたわ。

顔をパタパタ仰ぎながら窓の外を見ると、汽車は次の駅のホームに滑り込み、大勢の客たちが下りていく。

その中に、エドとグレアムがいた。


「ごめんなさい、エドワード。でも、どうしてもジョージに会いたいの」


私は窓に手を着くと、改札口に向かうエドの後姿に謝る。

その時、突然、エドがくるりと後方を振り返り、窓際に座る私と目が合ってしまう。



わっ!まずい!

見つかってしまったわ!



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