フラワーガーデン【アリシア編】
窓を開け、ずっと遠くの景色に目を凝らす。

汽車が緩やかなカーブに差し掛かり、そのスピードを落とし始めた時、私は窓に足を掛け、上半身を乗り出した。

「今だわ！」

飛び降りようと窓の上枠に手を掛けた瞬間、先生の叫ぶ声にびくっとなる。

「何をしてるんだ！」
「先生！」
「そこから降りるんだ！！」

先生は私の腰に手を回し、一生懸命車内へ引き摺り下ろそうとした。

「エドにばれちゃったの！次の駅まで行ったら、私、屋敷に返されちゃうの！」

「だからって、これは無謀だよ！」

風に煽られる髪を押さえながら、先生に叫び返す。

「無謀でもいい！ジョージに会えないんなら死んだも同じだわ！離して！先生のエッチ！！」
「エ、エッチ！？」

動揺する先生の手が一瞬緩む。


再度体勢を整え、足に力を入れた時、先生の怒りを押さえるかのような声が背後からする。

「分かった。飛び降りよう」
「え？！」
「僕も一緒に飛び降りる」
「ダメよ！危ないわ」

私の腕を先生は強引に引き、その胸に抱き締める。

「君に何かあったら、僕は……」

風のバタバタとはためく音に、先生の呟く声がよく聞こえない。



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