フラワーガーデン【アリシア編】
朦朧とする中、頭にヒンヤリとするタオルが置かれた感触に目を開けた。


「先生……」

「大丈夫？測ったら 102°F（38.9度） あったよ」


洗面器でタオルを絞っていた先生が、椅子をベッドの脇に引いて座る。


「何か食べたいものは？少し食べた方がいいんだけど……」

「今は、いいわ。ところで先生、ここは？」

「モーテル」

「初めて……泊まった」

「あまり綺麗な所じゃなくてごめん」


先生の言うとおり室内はとても狭くて、窓の外では壊れそうなネオンが、バチバチと音を立てて、火花を散らしていた。


確かに、今まで泊まったことのある高級ホテルや別宅のレジデンスとは違っていた。


「明日になったら祭りの客も引いて、もう少しましなホテルに泊まれると思うから今日だけ我慢して」

「ううん。ここで、十分。私とジョージが住んでいたアイルランドの家はもっともっとオンボロだったわ」

「そんなに？」

「うん。雨漏りとかするのよ。でも、ぽかぽか温かいお家だったわ。……帰りたい。もう一度、ジョージと」

「帰れるよ。今は風邪を治すことが先決だ。もう少し寝た方がいい」


先生がいてくれて良かった。

安心した私は再び眠りに落ちていった。




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