フラワーガーデン【アリシア編】
暗闇の中でジョージは血まみれの体を丸め、膝を抱えていた。

私はジョージを抱きしめる。

この血は戦場で着いた血?

それとも父さん達の?

震えるジョージの体が、突然、私の腕の中で霧のように散っていった。



「ジョージ!!」


はぁ――、はぁ――、はぁ―――っ……


……ゆ…め……だったの……


だけど、なんてひどい夢……



ベッドから飛び起きて、ここがモーテルであることに気付くまでに随分時間が掛かった。

傍らでは看病疲れしたのか、先生が椅子に座ったまま私のベッドでうつ伏せになって寝息を立てていた。

私は先生にブランケットを掛けると、そっと部屋を出る。

喉が渇いた。

ロビーとか、厨房とかで水を貰えないかとキョロキョロ辺りを見回しながら、廊下を歩く。

しーんと静まり返る廊下の突き当たりから、薄明かりが漏れ、ボソボソと人の話し声がしてきた。


「しかしよ。ヘイワーズ財閥のお嬢さんも失踪とは随分思い切った事をしなすったな」

私?!

私のことを話してるの?

まずいわ!こんな小さな街ですら、私のことが知れ渡っているなんて。

慌てて柱の陰に体を隠す。


「まぁ、無理もねぇ。あの、ヘイワーズ家だ。嫌気がさしたんだろうよ。
あれほど慈悲深くお優しいオリヴィア様ですら、失踪なさったくれぇだ」

「ちげぇねー」


母さんのこと……?

私は一旦、立ち去ろうとした足を止め、再度、男達の話に耳を傾ける。


「血塗られた家系だ」

「まぁ、マッカーシー家共々、ろくな死に方しねぇだろうなぁ」

「そうだな。今更、慈善事業とは、全く……」


何の事?


血と言う血がドクドクと波打つように全身を駆け巡る。



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