フラワーガーデン【アリシア編】
先生の看護の甲斐あってか、私の熱は翌朝には下がっていた。

だけど、まだ足元の覚束ない私の体を慮って、先生は出発を渋っていた。


「次は野宿になるかもしれない。だから、休めるうちにベッドで休んだ方がいい」


今すぐ発ちたいと言う私の意見と、もう一泊宿泊した方がいいと言う先生の意見の間を取って、明朝、夜が明け切る前に発とうということになった。


夜の闇に乗じて移動した方が安全だと言う思惑がそこにはあった。


まだ辺りが静まり返る早朝の部屋で、ベッドを整えながら先生は何度も私の方を心配そうに見ていた。

「何をそんなに焦ってるの？」

「焦ってなんか……」

「昨日、部屋に戻ってから、様子が変なんだけど」

「別に……」


出発の支度をし、先生の質問をかわしながら、ふと、もしかすると先生は何か知っているのかもしれないと言う考えが頭を過る。


「ねぇ、先生」

「何？」

「先生は、おじい様がどんな事業をしているか知ってる？」

「今は、慈善事業をしていると聞いたけど？」

「じゃ、昔は？」

「……どうしたの？アリシア？」

「教えて！昔は！？」

「陸軍の現役時代はGeneralだったと聞いてるけど。それがどうかしたの？」


私は男達が言っていた「今更、慈善事業とは」と冷笑する声が耳から離れない。


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