フラワーガーデン【アリシア編】
「無理させてごめん」


気持ちのいい風がさぁーっと窓から流れ込んできた。

ここに来て、僕自身もようやく落ち着いてきた。

アリシアの顔色もさっきより幾分良くなってきたような気がする。


コンコン……


ドアをノックする音に返事を返すと、アマンダがコーヒーをトレーに乗せ、部屋に入ってきた。


「アリシアちゃん、だいじょーぶー?」

「さっきは、すみませんでした」

「いいのよぉ~」


アマンダの差し出すコーヒーを手にすると、窓辺に立ち、心地良い風に目を瞑った。


アマンダは自分のコーヒーをサイドテーブルに置くと、アリシアの寝顔を覗き込み、口を尖らせた。


「だけどぉ~。このコ、ほんっと、すっごいキレイなコねぇ~」


アマンダの嫉妬とも羨望とも取れる声に、僕は黙ってコーヒーを啜る。


「へぇ~、美味しいね」


アマンダはフフ~ン!と鼻を鳴らす。


悪い人ではなさそうだ。

変な人だけど。



「うっふ~ん。私自身も美味しい~のよぉ~」


ふぅっと艶かしい吐息を僕に吹きかける。


「いえ。そっちはいりません……」

「も~。僕だったら、タダでいいのにぃ~」

「タダでもごめんです」

「つれな~い」


アマンダが不満げに口を窄める。


「ザンネーン。夜這いしちゃおっかな~」


前言撤回。

悪い人ではなくても、やっぱり、ピラニアはピラニアだ。



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