フラワーガーデン【アリシア編】

「多分、ヘルパンギーナだと思う」

「ヘルパ……？分かんな～い！それって、大変なビョーキなの？」


アマンダが不安そうに、エリーの手を握り締める。


「風邪みたいなもんかな。さっき診たら、喉の奥に沢山小さな水泡があったし、咳も鼻水も出ていない。この時期の風邪で突然の高熱と言う事を考えても多分それだと思う」

「助かるのぉ～？」

「助かるよ。吐くといけないから、一気に水を飲ませたりしないで、少しずつこまめに水分を補給してあげれば、２～３日で熱は下がるよ」

「ホントにぃ～。死んだりしないのね～。センセ～、ありがとぉ～」


アマンダは涙と鼻水で、化粧をぐちゃぐちゃにしながら、最高の笑顔で微笑んだ。


「それは、治ってから言って下さい」

「でもぉ、ありがとぉぉぉぉ」


アマンダがアリシアの腕の中でチーンと鼻をかむ。


どんなに大人ぶっていても、どんなに常識はずれなことをしてるとしても、やっぱり１８歳の女の子だ。

初めて、アマンダが年相応に見えてきて可愛いと思えるゆとりも出て来た。

僕は熱が高いエリーの脇にタオルで包んだ氷嚢を置くと、心配そうにベッドの脇に立つアマンダの頭を優しく撫でた。


「センセ～」

「ん？」

「お金は無いけどぉ～。お礼にタダエッチ券１００回分あげるね～」


アリシアは洗面器をボトッ落とし、蒼ざめてる。

はぁ～。

危うく油断するところだった。

やっぱり弱ってもピラニアはピラニアだ。


「それは光栄です。でも、好きなコがいるから、気持ちだけ」

「え？先生、好きな人がいるの？」


アリシアからの質問にアマンダがニヤニヤ笑いながら、「報われな～い」とチャチャを入れる。


僕は苦笑いしながらアリシアが落とした洗面器を拾い上げ、彼女に手渡した。