フラワーガーデン【アリシア編】
「ごめん。ちょっと、先にその校舎を下見して来る。行進が終わったらおいで」


僕は席を立つと、アリシアから顔を背けて校舎へと走って行った。

校舎のトイレに入ると、僕は水道を全開にし、頭から水を被った。

だけど、どんなに水を勢いよく流しても、アリシアの嬉しそうに涙ぐむ横顔が脳裏に鮮明に焼き付き、流れ落ちてなどくれない。

熱くなる頭は今やガンガンと鳴り、嫉妬の嵐が僕の頭の中をぐちゃぐちゃに吹き荒らしていた。


ほんの少しのジョージの歩く癖とか雰囲気とかだけで、彼女はジョージを探し当てたんだ。

そして、２人はあの短い時間の中で、お互いの想いを伝え合っていた……。



僕は頭をぶるっと振ると、嫉妬に歪む自分の醜い顔を鏡の中に見た。

鏡についた雫がまるで涙のように流れ落ちている……。



「ちっくしょぉ！！！！」



ガッシャーーーン！



僕は鏡に映る惨めな顔をした自分の頬を打った。



昨日までは確かにあったアリシアの心が、今はもう掴めない。



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