フラワーガーデン【アリシア編】
アリシアは、痛そうにその場に蹲るマッカーシーを呆然と見ていた僕の腕を掴むと、


「先生!トンズラするわよ!!」


猛ダッシュで階段を駆け下り始めた。



アリシアのヘナチョコ護身術の今回の犠牲者にならなくて本当に良かったと心底安堵しつつも、こんなおてんばなアリシアをフィアンセにしてしまったマッカーシーに少しだけ同情した。


階段の踊り場まで来た時、アリシアは一瞬、足を止め、後ろを振り返った。


「どうしたの?」


数歩先に階段を降りていた僕は、遠く背後を見つめているアリシアを振り返る。


「アリシア!?」


アリシアははっと我に返ったようで、「何でも……」と言いながら、僕の差し延べた手に自らの手を乗せた。



僕達は階段を降り、そのまま階段の裏側に隠れるとその場にしゃがみこみ、身を潜ませた。


数分後、エドワード・マッカーシーが階段を駆け降り遠ざかっていく足音を聞きながらほっとした僕は、アリシアを抱きしめ、その唇にそっとキスをした。


「せ……せん……せ……」

「僕は……蹴らないで……」


僕は何度も祈るように、恥かしがる彼女の唇を捕えてキスをした。

どうか、僕の元に帰ってきて……

ジョージの元でもなく、マッカーシーの元でもなく、僕の元へ……。





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