フラワーガーデン【アリシア編】
僕は今にも泣きそうな顔で床にへたり込むアリシアの肩に手を置くと、僕の方に向かせ、彼女の額を優しく撫でた。


「アリシアが悪いんじゃない。勝手に連れ出した僕に責任がある」

「連れ出したって……」

「日本語の課外授業と偽って、連れ出した」

「なぜそんなことを！」


ジョージはアリシアに触れている僕の手が気になるようで、さっきからずっと目線を僕の手に注いでいる。


「君を想って泣いているアリシアを、黙って見ていられなかった」

「先生ともあろう人が……。なんて無茶をするんですか」


ジョージの言葉は非難めいたものを含んでいたが、それよりもアリシアを撫でる僕の手の方が気になって仕方ない様子だった。


彼の動揺が僕にも伝わってくる。


「このまま、彼女を連れて帰れと言うなら、喜んでそうする。
だけど、その時は、もう二度と君のことで泣かせたりはしない」

「どう言う事だよ」


僕を睨みつけるジョージの瞳が嫉妬に揺らめくのが見て取れた。


「ジョージ、君が要らないというのなら、アリシアをさらってでも僕のものにする……」


アリシアが、緊張に体を強張らせている。


「そして、もう２度と君には帰さない」


僕はアリシアを立たせると、半泣きの彼女の頭を抱え込むようにして、そのまま外へ出ようとした。





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