フラワーガーデン【アリシア編】
「待てよ!」


ジョージの言葉に、僕たちの足が止った。


「いいぜ、連れて行けよ。フジエダ」


アリシアは、ジョージの言葉に信じられないといった様子で、体を小刻みに震わせた。


「ジョージ!貴様……」

「アリシア!オレは、お前に何も上げられない。
幸せな家庭も、結婚の幸せも。
それでも、もし、お前がそれでもいいと……それでも、オレを愛してくれると言うなら、奪いに行く。
お前が誰のものになっていても……。
おじい様との約束を果たして、必ず、4年後、奪いに行く」

「ジョージ!」


アリシアは、僕の腕から抜け出すと、泣きながらジョージの腕の中へ戻って行った。


「愛してる。アリシア……」


どんな時も、気丈に振舞っていたアリシアがジョージの腕の中で堰を切ったように大声を上げて泣いていた。


「ごめんな。オレは……おまえを愛してあげることしかできない……」


ジョージはアリシアをきつくその腕に抱きしめた。



髪を切り、病に倒れ、それでも、アリシア……君は必死にジョージを求めて旅をしてきた。

時には勇敢に、その小さな体で男達をやっつけ、僕を張り倒したりもした。


逞しいと思った。

美しいと思った。


その彼女が今はとても弱々しくて小さなただの女の子に見えた。



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