フラワーガーデン【アリシア編】
僕は走って、走って、走って、走って。



まるで、砂地を走っているようなもどかしさの中、必死で走った。


そして、市場に着くなり、膝が折れ、呆然とする。




市場のどかな情景は、一変して地獄絵図と化し、辺りは濛々とした煙に包まれていた。



これは……夢だ。


きっとこれは悪い夢で……。

あちこちから聞こえる悲鳴と阿鼻叫喚が僕を現実に引き戻す。


そうだ。


父さんは?


母さんは、無事なのか?


必死に足に力を入れてゆらりと立ち上がり、多くの遺体を踏まないように超えながら、僕は辺りを探す。



「とぉ……さ……ん。かぁ……さん?」



どこにいるんだよ!?



確か、いつもはこの辺りに店を出して……。




その数メートル先に、僕は父さんがしていたはずの腕時計を見つけ、めまいがしてその場にうずくまる。



「……うっ!」


たまらず僕は嘔吐した。




腕時計には……



父さんの手しかなかったんだ。




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