フラワーガーデン【アリシア編】

エドは私達が初めて会った小高い丘の麓に車を止めると、私の手を引き木の下に立つ。


「あそこから、あそこ……そうあの大きな丘陵があるところまで。
それがヘイワーズ家の土地です」


レストラン、デパート、駅……


「これらは全てヘイワーズ財閥のものです」

「知ってるわ」

「それではあれら全てが銀行の抵当に入っていることは？」

「……え？！」


エドは銀行、病院、学校と言った施設を次々と指差しながら言葉を続ける。

でも、彼の言葉がひどく遠くに聞こえる。

何とか理解しなくっちゃと思うけど、でも、頭が……思考が追い付かない……。


いつの間にか乗り込んだ車の中でエドはふっと溜め息をつくと、川のほとりに車を停め、私たちは並んで川沿いに少し歩くことにした。


「マッカーシー財閥がロスチャイルド家に匹敵するほどの資産を有していることはご存知ですか？」

「何が言いたいの……？」

「私は、マッカーシー財閥はヘイワーズ氏の借財の一部を肩代わりしました。
ほんの約４億ドル（１４００億円：１９６０年代のレート）ですが」


エドがあまりにもさらりと言うので、私は大した金額ではないような錯覚にすら陥ってしまう。


「それで、借財の肩に私を買ったって言うのね？」

「いや、それは違う。我々、マッカーシー家とヘイワーズ家は常に歴史の表裏をなして……」


「どういうこと？」