先生だって遊びたい
佐々木さんに医者を辞めたのは香織が関係してる?と聞かれただ首を横に振るだけだった。


美鈴はインターンを終わりERで働いていた。
毎日、何人も運ばれてくる患者さんの為に寝る間も惜しんで働いた。
だが、どんなに手を尽くしても全ての人を助ける事は出来ない。
人の死を見る度に自分の未熟さを知り『私は何をして居るんだ』と自分を情けなく思った。
それでも休む事を許されず毎日無我夢中に働いていた。
そんな時救急で頭部外傷妊娠30週の妊婦さんが運ばれて来た。
その日はすでに出産が2件入っており当直の産科医は手が空いていなかった為一度は断ったのだが他に受け入れてくれる病院が無く高度救急救命センターであるうちに運ばれて来たのだ。
直ぐに他の産科医に電話をしたが連絡がつかなかった。
運ばれて来た時にはすでに赤ちゃんの心音は弱っていた。
このまま手をこまねいていると母体まで危ない。
せめてお母さんだけでもと私達外科医は力を尽くしたが命を救う事は出来なかった。
手術室を出ると警察官が状況確認をしたいと待っていた。
何でもその妊婦さんは若い男の酔っ払っいに絡まれ、逃げようとして歩道橋の階段を踏み外したとの事だった。

美鈴は香織の事を思い出し『また…助けられなかった……』と自分を責めた。
その後医師を辞めた……
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