直線の距離ー偶然の再会ー
向かい合わせに座ってすぐ


『ココアはお好きですか?』


店長の颯さんがトレイを片手に彼女に話しかける。



颯さんは俺んちの近所に住んでるお兄ちゃんみたいな人で、よく話しかけてくれるすげーいい人だ。



「はい、大好きです!」



彼女が応えると颯さんは持っていたトレイから、テーブルにコトンと1杯のカップを置いた。



「あの、えっと…。」



戸惑っていると颯さんが彼女にウインクをした。



「お嬢ちゃん可愛いからサービス☆」

「颯さんちょっとキモいよ。」



ちょっとどころじゃなくてすごい、だけど。


俺がそう言うと



「ひろひどいな(笑)
ま、本当はひろの友達だからだけどね。でもサービスはサービス!」




ついていけない颯さんのテンションに彼女は素直に



「ありがとうございます。」



と可愛らしい笑顔を向けた。


「…。」


右手で左胸辺りのシャツを握る。



一瞬モヤっとした。
なんだろう、この気持ち。


とてもいい気分とは言えない。



それでもまた彼女と話しているうちにそんな考えも忘れていた。

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